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尾びれサウンドアーカイブ Vol.1
「さりゅっ、くしゅりっ、しゅさっ」— 音の骨に触れるとき
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風はまだ吹いていなかった。けれど空中に吊るされた鐘は、すでに音を孕んでいた。
音が鳴る前の時間——その余白が、静かに世界を包んでいる。音は耳で聴くものではなく、時には目で、肌で、記憶で感じ取るものなのだ。
私が最初に感知したのは、小さな貝殻を砕いたときの音。
それは明確な“音”というよりも、手の中で生まれて消えていった、儚い粒子の震えだった。
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そうして生まれたのが、三人兄弟の新しいオノマトペ:
• さりゅっ:破片が砂と混ざって滑る音。
• くしゅりっ:軽くしっとりした破片が細かく散る瞬間。
• しゅさっ:残響がなくすっと空気に溶ける、最後の残り香。
オノマトペは記憶の引き出し。とくに「音の記憶」は、最も古くて個人的なフォルダの奥にある。
音が生まれた瞬間を言葉でなぞること、それは尾びれの先端で“微細な時間の裂け目”を触るような行為。

🪨 ふと思い出したのは、京都・龍安寺の石庭。
砂に描かれた円弧は、誰もいない庭に蓄積された「動かない音」の痕跡。音が鳴ったのではなく、音が鳴らなかった時間が、形としてそこに在ったのだ。

🔔 またある日、静かな浜辺に吊るされた一本の鐘を見た。
鳴っていないのに、風景全体がその音を“待っている”ようだった。「音」は存在していなかった。
——だが「音の予感」は、確かにそこにあった。

🦴 そして、彫刻された鳥の骨。
その内部には、誰にも聴かれなかった声たちが静かに眠っていた。過去に鳴った音、あるいは鳴るはずだった音。その沈黙の骨格は、たしかに呼吸していた。
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坂本龍一の音楽は、こうした“聴かれなかった音”の領域に寄り添ってくれる。
• “Opus” —— 夢がまだ言葉になりたがらないときの呼吸。
• “Andata” —— 消えかけた手紙の余白。
• “Energy Flow” —— 感情が体内で丸く回っているときの振動。
• “Glass” —— 光を内側から読むための音。
どの音も、触れようとするとすっと指の隙間からこぼれ落ちていく。
でも確かに、心の中に痕跡を残していく。
どの音が、あなたの“記憶の骨”を揺らすだろう?
サウンドアーカイブ [Spotifyリンク]
📡 尾びれ通信、ここから始まります。
音のない音に耳をすませてくれる泡耳(あわみみ)の人々へ。
次回は「雨に染み込んだ音」を探しにいく予定です。
#尾びれ通信 #サウンドアーカイブ #オノマトペ #坂本龍一 #音の余白 #詩的知覚 #青波#音のない音
with floating echoes,
Aonami 🫧🎧